戦闘訓練室にて……。
「誰もいないよな?」
「ああ、この部屋はもちろん、所内に人がいる気配は無い」
「部屋の中に隠し扉とかも、見つからないね」
「それにしても、またやるの?」
「この前の怪談は、カーシルのせいで全て台無しになったからな」
「僕のせい!?」
「そういうわけで新しい話を仕入れてきた、今度のはカーシルじゃ説明がつかないぜ」
「戦闘訓練室でする必要ないんじゃ……、怪談よりエリーさんのほうが怖いよ」
「エリーさんが現れるかもしれない恐怖も、怪談をやる醍醐味として加えていいだろう」
(やだー……)
「さて、始めるとするか、ロギンスから頼む」
ロギンスが口裂け女の話を語る……。
「その口裂け女って、ユサじゃね?」
「なんで私!?
口裂けてないよ!」
「今はもう治したんだろ?」
「ちがーーうっ!!」
「やっぱり誰かの能力で説明がつくんだ……」
「次の話を頼む、アロク」
アロクが雪女の話を語る……。
「雪女の正体もユサだね」
「どういうことだ?」
「前ユサが言ったダジャレ……『心ユサぶるなあ、ユサだけに』がもう、ほんと寒かった」
「!!!?!!!!!!??」
ドンッ!!
(ユサが両手でカーシルを押し飛ばした)
「ぐはぁっ!!」
「ばかーーーっ!!
なにバラしてるのっていうか、そこまで寒くないじゃん!」
「寒いよっ!」
「やれやれ、今度は全部ユサで説明がつくのか」
「カーシルとユサが痴話喧嘩を始めやがった、もう俺たちだけで続けるか」
「次は俺の番だな、蛇口から長い髪が……」
「ロギンスだな」
「長い髪だけで特定するな!
まったく……、別の話をするぞ」
「ベッドの下に斧を持ったアロクが……」
「話の中で無理やり特定させんなよ!」
喧々囂々……
「みんな落ち着いたようだな」
「うん」
「ごめんね」
「よし、次の話で最後にするぞ、ロギンス頼む」
「4人の登山者が山で遭難して、見つけた山小屋に……」
「あ、それ知ってる」
「5人目がいなきゃ、話が成立しないやつだろ?」
「でも、いるはずのない5人目がいたら、普通気づくような……」
「よっぽど気が抜けてんだろうな、戦闘科の俺からすりゃ考えられん話だ」
「まったくですねー」
「うわあああぁぁぁっ!!」
シュンッ!(瞬間移動)
「相変わらず私の気配を察することができないなんて、まだまだですねー」